我が国の高識字率を都市伝説としたアフリカの友人

最近ウケたネットの話。
今更の話だからなんか爆笑とは違ったんだけど。
だがまあ、また新しい形で同じネタが出てきたということ、それはいいことじゃないかとは思った。
何度でも掘り下げる必要がある話しだろうから。
 

日本の識字率は99%っていうけど、電気屋で働いてて接客してると 
 


・誤購入して返品したい客 「iPhone Xか8かなんてわかんないじゃん(パッケージに書いてある」 
 
・電化製品買った客 「説明書はいらない。今使い方教えて」 
 
こんな感じなので体感では識字率は70%じゃないかなと思ってます



 

 
・・・
 アフリカから来た男がいた。
 そいつはアフリカ人らしい頑健な男ではなかったが、頑固さでは日本人にひけを取らず、俺はそいつとよく付き合い、遊びにでかけたりもした。
 元の縁はパソコンを譲ったのが縁だった。
 カリカリなんかやっているので、それとなくパソコンが欲しくないかと聞いたら商談が成立したのだった。ヒマになるとそいつのサポセンを買って出た。
 アフリカ文字のフォントが入れられるようになって喜んでいた。
 
 真面目な男だった。
 突然、「自分はベジタリアンになった」とか言い出し、ファミレスで「ベイコンとホウレン草のパスタ」からベイコンを抜いてくれと店員に迫った。
 どうやって探し出したのか、ベジタリアン用の店を探してきて行こうと誘われた。行ってみるとグルテンを使ったステーキみたいなのがメニューにある。アワビだといってエリンギだ。俺は「なんでこんなもん食うんだ?ベジタリアンってんだからわざわざニセ肉なんか食う必要もねえだろう? ははあ、やはり肉が食いたくて我慢しているわけか?w」なーんて言ってからかったものだ。奴は言いよどんだ。
 悪いやつではなかった。
 クラブに連れて行ってあわよくばいい女といい仲になりそうになったこともあった。その時はこいつが気を利かせて色々喋ったものだからそんな感じになったのだった。レゲエミュージックの店ではこんな奴が引っ張りだこだったのかもしれないが、俺はとんと気がつかなかった。


 あまり遊んだりするような奴ではなかったから、あの時は結構気を使ったのだと思う。
 
 
 ある時、日本人の識字率について99パーセントを越えているという話をしたら、そいつは頑として全く信じない。それは「政府系プロパガンダ」なのだと言った。
 識字率を高く言ってどんな政治的メリットがあるかよくわからない。「教育のたまものだ」と政府が胸を張るという工作だとしても、政党政治の浮動率からすれば識字教育の時間的スパンはあまりに長過ぎるじゃないか。


 だから実感として俺もそんなパーセンテージだと信じるが、と、主張してもこいつはいっこうに信じない。
 じゃあと、こっちも証明する方法を考えても思いつかず、すっかり考え込んでしまった。
 その上、それはプロパガンダだともいう。
 奴がそう言うからには、識字率がプロパガンダとして使える国というのがあるんだろう。俺にはそのリアリティが湧かなかった。
 貧弱な想像力ではそこまで言われるとわからなくなった。
 
 
 確かにフランスなんかでは文字の読めない連中がいるし、出逢うことがある。パン屋とか、思い当たるフシはある。w
 日本ではどうしたら識字率の正確さ、正当性について説明できるんだろうと思った。
 
 この議論はその後も機会あるごとに奴とわあわあやった。
 意義深い議論ではあった。
 俺がこういう人間なもんだから、普段は陰気というか大人しい奴もこの話となると攻撃的でやたらと乗ってきた。 正直、面白かった。
 
 
 ある時期、こっちの忙しいのにかまけてすっかり連絡を取らなくなり、ふと連絡して見たら入院していた。
 見舞いに行くと相変わらず奴は遠慮がちにこちらをみて迎えた。
 もうそんな付き合いでもあるいまいにと思うのだが、結局は奴には同じ国とか同じ肌でないと信用できないものがあったのかも知れない。
 あまり変わりのない様子の奴に声をかけると恥ずかしそうになんでもないと言った。いい待遇の病院だった。
 
 姉さんがいて、後でガンだと聞かされた。
 よくなると本人も思っていて、俺は再会を約束して、ただ黙ってにこやかにそこを後にした。
 死んだのはすぐだった。
 
 
 
 それからずっと後になって、俺はやつが死んだことをアフリカ系のBarにふと立ち寄った時に知ったのだった。その地方の出身では有名人だったらしい。
 
 
 少し泣いた。
 
 しかしあんまり泣くと、また、俺が奴をネタにして女でも引っ掛けようとしているとか言われそうで、そこそこのところで涙は止むしかなかった。
 
 

 

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