日経平均は十万円になる

武者陵司氏の予言

 武者陵司という経済評論家がおられます。かつてドイツ証券の主任研究員だった人。
 独立されて武者リサーチ代表となって活躍し、経済講演を各地でされ活躍されています。
 
 証券界ではかなり有名な人だと思います。
 
 彼は民主党野田政権の頃から日経平均は三万円、三万五千円、ヘタをしたら四万円になる。なんて主張されていたものでした。
 
 当時、デフレだと言われ、先の見通しが立たない状況にあえいでいた証券界でしたが、その当時に冷笑された彼の説はやがて現在の株価となって実現しています。
 ちゃんと言い当てたのです。
 
 誰でも「そんなわけはないだろう」と思っていた日経平均三万円説でした。それが四万円になったのです。
 
 
 このことを意識しないわけもありません。
 私はここに「日経平均十万円」という説をお話しようと思います。
 
 
 武者氏の予言、しかしそれは相場見通しというよりも予言でした。
 
 また、果たして武者氏の言ったように「日本経済は黄金時代を迎えている」のか、どうか。
 そこは私には疑問です。
 「日本経済だけに明るさがある」、そうだとしたら、こんな国際情勢の中で理不尽な要求が起きないわけはありません。
 事実、岸田首相は米国のいいなりにカネを出させられています。
 ウクで分かったように西側国際社会は理不尽な欺瞞と嘘が横行しています。日本経済を取り巻くものはそんなに単純なものではないと言わざるを得ません。
 





 
 だいたい、円安というのは円の価値が下がっていく状態を意味します。
 いくら輸出で競争力が付くなどと言っても、それは為替の話に過ぎません。
 海外から見れば日本の価値はドルよりも低くなっているのです。稼いだ金は海外から見れば軽いものです。
 
 だから上がってきた今の株高とも言えるのです。為替で円安だから日本の株を買いやすいわけです。
 
 
 それに、十年以上の月日が経ってやっと今日の日経平均四万円になったわけです。
 武者陵司氏は「いつ」とは明確には言ってはいなかった。
 
 これに対し、私がこれからお話するのはもう少し根拠のある話だと自負しています。
 日本経済には多くの不安材料があり岸田のように政治家に期待などできない、にもかかわらず日経平均は十万円をつける可能性が高い、私はそう思っているのです。
 
 

論者としての気持ち

 簡単なことですから結論から述べたいものですが、こういう話をするのは私はちょっと複雑な心境です。
 
 私は確実な先の見通しとして日経平均が十万円になることを述べるつもりです。
 それ以外にはないと言ってもいい。そうでなければ日本が沈没する。
 その理屈、説明もできます。
 
 しかし、これをお話する私は果たして儲けられるのか。どうしても私は自問してしまうのです。
 
 私はアナリストでも証券界の関係者でもありません。経済講演をしてカネを貰っているわけでもない。
 だから、こんなことをお話するのであればまず自分の利益になる道が分かってないといけません。
 
 しかしまだそれは明確な形で出てこない。私はそこに苦悩しています。
 
 残念なことですが、理屈や論理を解き明かそうとする当人というのはしばしば不利になるものです。
 分かっているのにできない。やれない。
 理屈と論理だけの理解に終わってしまうのです。ここが悩むところです。
 
 こういう話をお聞かせして、スッと納得して行動できる人がやはり儲けられるのでしょう。
 理屈が分かっているのに当人の私がなぜできないのか、それが私の悩むところなのです。
 
 

 理屈や論理というのは常に検証していないといけません。
 繰り返し反駁を想定し、逆の想定さえ考える。理屈はおかしくないか、繰り返し自問する。そうして考え続けます。
 そうすると「まだ断言には至らないかも知れない。」そんな風になってしまう。
 
 実際、偉そうに家内に相場や経済の話をしていても私はそうです。
 なかなか理解しない家内にイラつきながら説明をし、分かりやすく喩えまでしてやる。
 そんなに分かってるならなぜ私自身は上手にできなかったのか。
 
 
 真理とまでは言いませんが、先を見るというのは損な役回りなのではないかと思うことかあります。
 私も投資をする当事者です。だから歯がゆくて仕方がありません。とても残念に思うことです。
 
 自分の説が正しいと思えば思うほど、疑いが強くなってしまう。それが正当な態度だと思うからです。
 妄信することはありません。理屈を肉付けする必要を感じます。だからなかなか素直になれない。そうして自分は対応しないままに終わってしまう。
 
 どうしても後になって後悔してしまう自分が見えてしまうのです。
 自分はこうなることが分かっていたではないか、と。
 
 助けてもらえるならお助けいただきたいw。
 
 

日銀のETF購入

 さて、結論から申し上げれば「日経平均十万円説」の根拠は日銀の買い入れたETFにあります。
 その処分方法によって、それが正しくされれば日経平均は十万円になるということです。
 いや、十二万円ぐらいはあるかも知れません。
 
 なお、ダウ工業株で言えば4万ドルを目前にしています。通貨換算すればそれは60万円ぐらい。
 一ドル一円ではないのですから日経平均が四万円だからと言ってダウが四万ドルになるというのは単なる語呂合わせでしかありません。「心理」と言っても繰り返し言われてしまいには刷り込まれただけの話で、変な話です。
 
 
 さて、デフレ対策として日銀はETFを買い上げてきました。
 それは株価対策でもありました。
 中央銀行の金融政策としてはあまりに突飛なものです。
 日銀はゼロ金利政策に加え、株式市場から上場型投資信託という形で株を買い上げたのです。
 
 振り返れば我が国の政治は何も具体的な経済対策ができませんでした。
 その無策のしわ寄せが日銀に降りかかったのです。
 それが「質的緩和」と「量的緩和」に加えた「手段的緩和」と言われたものです。それがETFの日銀買い入れです。
 





 
 ともかく買い入れたETFは現在含み益と併せで時価総額で70兆円となっています。
 年間の我が国の税収に匹敵する規模です。
 
 気が付いたら巨額の資産を日銀は持つことになってしまったのです。70兆円。
 この額はETF市場の8割のシェアがあると言われています。
 
 先進各国で中央銀行が株を買った例はありません。米国では禁止さえされています。
 このような歪な金融政策を続けることはできません。日銀がETFの保有を続けるわけにはゆきません。ではどうするのか。
 
 
 問題はこの日銀が保有しているETFをどう処分するのかということです。
 日銀が「出口戦略」として、もしこれを売却しようとすれば大きな混乱が起きることは必死です。
 株価は大幅に下がるでしょうし、市場で恐怖が連鎖して株価はどこまでも下がるでしょう。
 
 ではもし混乱を起こさぬようペースを限定して売却しようとすればどうか。そうなれば150年かかるという試算さえあります。
 よって、これを日銀の負の遺産とする論説もあるのです。
 
 

デフレ脱却の後始末

 この日銀が履かせたゲタをどうするのか、どうやって始末をつけるのかということ。
 具体的にどうやったら日銀はこの株式を売り逃げられるでしょうか。
 
 それはまるで不可能に見えます。
 不可能に近いような額の日銀保有のETFの処分、これをどうするのか。それは可能なのか。
 多くの人々にもまるで不可能に見えているようです。
 
 しかしそれはできると私は思います。そしてやらねばなりません。
 その判断次第というところなのです。
 
 
 すでに岸田はブラックロックなど外資投資会社らと面談をしています。そこには恐らくそんな日銀保有のETFの処分についてのことが関係していたと私は思います。
 岸田首相がいかに無能でその意味など分からずとも、政府財務省あたりではその日銀保有のETFの引き取りの打診、その必要性が議論されていたに違いありません。
 
 事実、岸田はこのところずっと外資や海外ファンドを我が国に呼び寄せるなどと言っています。
 国民にはそれは売国政策でしかないように聞こえています。我が国の株式を外人に買わせる、そんなことより我が国の投資環境、税制をなんとかすべきなのに、と。
 

 しかし恐らくは中身はそうしたことではない。岸田が分かってないというだけです。彼が無知蒙昧なだけ。
 結局、日銀保有のETFをどこかに肩代わりしてもらう、引き受けてもらう、そういうことが念頭にある話だと思うのです。
 
 しかし、グローバリストの尖兵などとさえ言われるブラックロックがETFを買うでしょうか。
 ブラックロックは悪名高いESG投資などを標榜しておきながら自分たちは放棄した。
 それは株式をコントロールするためのプロパガンダでしたが、経済原則からまるで外れたものだったからです。
 企業が地球環境に「配慮」などしようもありません。それは政府規制の役割です。規制するなら根拠が議論されねばなりません。
 こうしたプロパガンダは危険なものなのです。
 
 ともかく、そんなブラックロックが日銀のETFを引き受ける、そんなことをするでしょうか。
 
 おおかたこんな日銀ETFの外資肩代わりなどという報道が流れれば岸田はまた売国奴と言われるでしょう。
 「外資に日本企業を売り渡すつもりか。」そんな批判を受けることでしょう。
 しかしグローバリストのやり方は「支配」だと言われています。それは帝国主義的なものだとも言われます。
 それが議決権もなく配当だけ、投資にしかならないETFなど買うはずもないのではないか。
 
 つまり彼らの特性からしてもあり得ない話です。
 そうすると日銀保有のETFの処分などとうてい不可能に思えてしまいます。
 
 

日経平均十万円の根拠

 しかしここで唯一の道があると私は思っています。
 
 それはETFの消却処分です。
 
 もし、このETFを日銀が「消却」、つまり文字通り燃やして消してしまうのであれば日経平均は十万円になるということです。
 
 
 会社が自社株買いをするのはよくあることです。
 発表があるとその会社の株価は上がることが多い。
 
 しかしそれはその会社の価値が上がるからではありません。
 自社の株をその企業が買っても会社の株式の価値は理論上は上がらないのです。中立です。
 
 自社株買いを発表した会社の株が上がることが多いのはなぜか、その会社が一定期間の間に自社の株式を買い入れると宣言したからです。
 「それなら先回りして安く買ってしまおう。」、それが株価を押し上げる圧力になります。
 
 しかし実際に自社株買いを終えたとしても、それは会社にとっては資産になるだけです。
 会社の資産が膨らんで代わりにキャッシュが減少した、それだけのことです。
 

 企業のファンダメンタルにとっての意味はほとんどありません。
 言ってみれば自社株買いは「当社の株はこんな安値に放置されるべきではないと考える。」とか、「これから一定の金額の株を買うよ。」などという市場への株価刺激、つまりアナウンス効果でしかないことになります。
 
 市場では自社株買いをハヤす向きも多いものです。
 根強く材料として言われるものですが、それはこんなことが分かっていながら知らないフリをしているだけの茶番でしかありません。市場のコンセンサスに過ぎないのです。
 
 
 では自社株を買って、それによって会社の価値を上げようとしたらどうするか。
 それが「消却」ということです。
 
 買った株を燃やして無くしてしまうわけです。そうするとひと株当たりの利益は上がりますから、その株の価値は上がる。
 これを実際にやっている企業も多くあります。
 
 わざわざカネを出して買った株を燃やしてしまうなんて損ではないか、そんな感覚はどうしてもあるかも知れません。
 しかしそれによってひと株当たりの利益は上がるわけです。
 資産構成が筋肉質なものになり無駄がなくなります。資本利益率が低かったものが高くなります。
 何も問題はないのです。
 
 

日銀による「自社株買い」

 もうお分かりかと思いますが、日銀がETFを買ってきたということは自社株買いをしてきたのと同じということです。
 日本の中央銀行が日本株、すなわち日本経済を買ったのです。自社株買いをしてきたのです。
 
 最後には消却させて日銀のバランスシートから消す。
 日本銀行券は不換紙幣です。信用によって維持されている通貨です。そこに何も問題はありません。日銀は借金をしてETFを買ってきたわけではないのです。
 
 その70兆円分は日経平均の価値となって返ってきます。
 日本経済に、既存の株主に、日経平均に還元するということになる。
 そうして日銀の得た含み益そっくり日本経済に移転できることになります。
 
 これは日経平均をゆっくり押し上げることになります。
 何の直接的インパクトはありませんからもちろん急激には上がりません。
 ただ、ジワジワとファンダメンタルへと収斂してゆくはずです。
 
 

 今のように日銀が巨額の資産を抱えている状態は異常でしかありません。長続きできることでは到底ない。
 金利政策としても中立性がありませんし、日銀の発行する紙幣の根拠がETFで裏付けられている、そんなことになりかねません。
 それは日銀券が不換紙幣であることを放棄することになります。
 
 日銀によって作られる円の信認がETFによって制限されることになるわけです。
 もともと他国に例の無い、あまりに異例な政策でしたから日銀のETF保有自体はあまり問題にはなっていませんが、この状態が続けばいずれは露見する問題点です。
 
 「日銀は保有ETFをどう処分するのか」あるいは「日銀は保有ETFを処分できない」、そういうことが注目されるようになれば日銀の通貨発行自体がETFとリンクしているということになりかねないのです。
 
 日銀保有のETFは何らかの方法で処分せねばならないことは自明です。
 そして具体的なやり方は消却、これしかないのです。
 
 
 この日銀保有のETFの消却処分、その宣言が行われれば日経平均はゆっくりと上昇してゆくでしょう。
 そうして五年以内に日経平均は十万円をつける。
 
 

市場におもねった顛末

 この選択肢はなかなか国民の理解が得られないかも知れません。やり方も考慮されねばならいでしょう。
 しかしやらねばならないことです。
 
 どだい振り返ればこの日銀によるETF買い入れ、この政策には無理がありました。
 中央銀行が自国の株を買う、あまりにも手前味噌なやり方です。
 
 それは「株価対策を」なんて経済団体から突き上げられてやった苦肉の策でした。
 経営陣は責任など取りたくありません。株価が安泰であれば責任を取らなくて済む。
 だから政府を突き上げたのです。
 つまりこれは経済対策ですらありません。
 
 その日本政府が経済対策に打つ手がなかったため、日銀を頼みの綱としたに過ぎません。
 
 それはもちろん我が国の金融政策を歪めています。
 
 
 そもそも、果たして「デフレ脱却」ということがそれほど必要であったでしょうか。
 やはりそれも経済団体に突き上げられた政治的なキャンペーンに過ぎませんでした。
 
 「デフレだ、デフレだ」と、マスコミがチョウチンをつけ、国民を洗脳しただけだったのです。
 
 デフレというのは経済活動の結果に過ぎません。
 実際にデフレ不況もあればインフレ不況もあります。
 
 デフレもインフレも経済には中立です。
 何の関係もない。
 
 あえて言えば、ギリギリまで無駄をそぎ落として競争する状態のデフレ経済。いい加減でドンブリ勘定、需要が供給を上回っているからあまり競合がない、比較されるようなことがない経済。
 せいぜいそのぐらいの違いでしかない。
 
 しかし「経済成長」といいながらその成長戦略は議論されることはありませんでした。
 ただモノの値段が上がればいい、やったのはそれだけです。
 

 
 今の円安にしてもそうです。
 日本経済には円安の方が居心地がいい、現在はそんな市場のコンセンサスになっているというだけに過ぎません。それをみんなが共有しているだけ。共同幻想です。
 
 為替にしても経済には中立なのです。
 
 「急激な為替変動は好ましくない。」日銀はことあるごとにそうコミットしてきましたが、最近はすっかり言わなくなってしまいました。
 円安で株高になると、黙ってしまっています。
 
 円安で輸出企業が競争力がつく、輸出品が売れる。果たしてそう言えるでしょうか。
 円安で輸出品のドル建ての値段を下げても円換算なら同じ。だから競争力になるのでしょうか。
 その輸出したものが売れた利益で現地で生産設備を作ろうとしたらどうなるか。大して儲かってはいないのです。稼いだ金を日本に持ち込むから儲かったようにみえるだけです。
 
 為替だけのことであれば競争力などつきようもありません。技術開発や研究開発など為替のぬるま湯に消し飛んでしまうかも知れません。
 
 
 円安の代わりに我が国の価値は毀損しているのです。
 円安なのです。ドルで我が国のものが安く買えてしまう。それが競争力が付いた結果と言えるでしょうか。
 
 それで日本が買われるでしょうか。
 入ってくるのは日本への直接投資ではありません。金融投資でしかない。
 我が国は衰退の道を密かに進んでいます。
 
 
 こんな円安の時機、なぜか今、新日鉄はUSスチールを買おうと言うのです。
 私にはそれは「買わされようとしている」としか見えないのですが。
 そうしてまた理不尽な文句をつけられ、安値で手放すことになるのでしょうか。
 「安全保障上の懸念」などとして。
  
 日本は何度騙されたら気が済むのか。
 まあこれは余談に過ぎません。
 
 
 日銀保有のETFの処分、そこには出口がないわけではないということ。
 少なくともそれで日銀の金融政策のひとつは正常化します。株式市場の歪みが解消することになります。
 
 以上が私の主張したいことです。
 
 
おそまつ
 
 
 

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