不都合な憶測、中国の領空侵犯

はじめに、本稿の悩ましさについて

 
 近年、人々のあいだに愛国的な雰囲気が高まっている。私は嬉しく感じる。
 
 「保守」というのは守ることだ。善なる道を選ぶことだ。
 それは自然を守ることだし、文化を守り法を守ろうとすることだ。
 平和を守ることだ。例外主義に陥らない決然とした心だ。私はそう思う。
 
 ロシアのウクライナ侵攻以降、我が国の安全保障を本気で心配するようになった人々も多い。
 
 
 しかしそうして愛国心を刺激され、人々はウクライナへの愚かな肩入れに突き動かされてしまったのではなかったか。
 西側権力の偽情報に惑わされてしまったのだ。
 戦争放棄や平和主義を掲げていた人々がウクライナを支援すべきと考えてしまったのだ。守るべきは人の生命であるのに。
 
 だが、今や多くの人々がこのウクライナ紛争の欺瞞に気が付いている。
 西側の権力はただロシアを敵視するばかり、極めて異常で欺瞞的な状態が続いているからだ。
 多くの人々がその嘘に気が付いていることだろう。
 もしかすると自らの愛国心が利用されてしまったのではないか、洗脳だったかも知れないのではないか、と。
 
 
 ロシアには正義があり、対する西側は狂気に陥っている。
 それは西側世界の権力による欺瞞である。
 
 ウクライナ紛争が勃発して三年、未だに西側は停戦を呼びかけようとはしない。その理由を権力者の誰も答えない。NATOはなぜ勢力を拡大させてきたのか、その理由を誰も答えようとしないのだ。
 
 ロシアを敵視することで権力の座に居座り続けることが出来る、そうした連中によってウクライナ紛争は焚きつけられ無駄な血が流され続けている。
 



 
 もとはこうした欺瞞と権力の独裁化は世界的なコロナ騒ぎを契機としたのだと私は思う。
 ウィルスによるパンデミックという事態がまことしやかに喧伝され、世界中で例外的な扱いが常態化するようになったのだ。
 正常な創薬手続きを踏まないリスクばかりのワクチンが認められるようになったのである。
 人々は副作用に苦しみ多くの人々が死亡しているが今も誰も責任を取らない。
 
 例外を無軌道に認めたことが現在の独裁的な権力と全体主義を呼び起こしたと言える。
 今の西側社会では権力に都合の悪い言論は封殺され謀略が渦巻くばかりなのだ。
 
 
 我が国の政治も腐敗してしまった。
 多くの例外が緊急事態などとして容認されるようになった。法律や議会手続きによらず閣議決定だけで政策が通るようになった。
 
 これは法治国家としての危機である。
 
 このような原則を無視した逸脱は国家の制度の規律の問題にかかるものであり我が国の平和と繁栄、存続と安定を脅かするものだ。
 
 国家がその主権を放棄することは他のどんな状況があろうとも許されるべきではない。
 すなわちそれは国民主権である。
 日本は日本人のための国家である。
 
 
 しかしそんな人々の疑問の声に政治家が応えることはない。
 彼ら政治家は「特権的」な立場を自認しており、国民を統治し支配できる卓越した能力があるとさえ思い込んでいる。
 そうした選民意識は一度間違えば取り返しがつかない。
 その誤りの責任が問われることもないからだ。
 
 つまり、彼らがいかに正しい行動をとっているように見えても、本来許されるべきことではないのだ。
 
 
 以下、これから述べることはあくまで私の「仮説」の話でしかない。
 こんな不都合な憶測もできるのではないか、それだけである。
 
 人々は簡単な答えを求めるものだ。
 しかし以下に憶測することは簡単な解答ではない。とうてい受け容れ難い話だろう。
 
 それは我が国を愛する人々にとっては残念な真相かも知れない。
 なぜなら、醜悪な売国奴に見えた者たちが売国奴でなかったかも知れず、非難のため宙に振り上げた拳の行きどころがなくなってしまうからだ。
 
 ゆえにこの憶測は悩ましいものを孕んでいる。
 だから正直、あまり大きな声で言えるものではないのだ。


 
 誰がみても国賊であり愚劣、我が国に唾しているとしか考えられないような連中が、「実は国益を考えている」などとは誰も認めたくはないだろう。
 
 
 これが真実かどうかは分からない。しかしあり得る仮説なのだ。
 
 
 ただ、もし以下のような憶測の通りだとすれば、私たちは別なことを心配しなければならないだろう。
 それは国民不在であり、国民主権と民主主義を否定するものだからだ。
 
 どれほど拙いやり方であろうと、我々国民は正義と真実を追及する権利がある。
 どんなことでも透明性の下に国民全てが議論すべきなのである。一部の人々に任せていいということでは決してない。
 
 こんな「裏事情」というものを、結果を「是」として容認し国の舵取りを一部に任せたままにすることは国民主権を否定することになるのだ。
 私は保守としてそれを心配する。
 
 
 また、それは政治がその責任が問われることがなくなることを意味する。
 ということは、腐敗した意図によって政治が裏切りを働くことも十分に考えられるのだ。いざその時には抑止できるものはない。
 
 つまり、どれほど成果があろうとも国民を無視することが容認されてはならないのだ。
 逆に言えば、容認しないためにどんな犠牲が伴おうとも断じて許されてはならないということなのだ。
 
 
 まずはともあれ、以下に我が国の不都合な真相、その憶測を述べる。
 
 

中国軍機領空侵犯

 
<令和6年8月26日(月)、中国軍のY-9情報収集機が、11時29分頃から11時31分頃にかけて、長崎県男女群島沖の領海上空を侵犯したことを確認した。これに対し、自衛隊は、航空自衛隊西部航空方面隊の戦闘機を緊急発進させ、通告及び警告を実施する等の対応を実施した>
 
 これが今回起きた事件である。
 我が国と中国が領土主権を争っている場所ではなく、長崎沖という我が国の領土領空が侵犯されたのである。この事実は大きい。
 
 
 これに対し、我が国は目立った反応をしなかった。
 木原稔防衛大臣が会見し、「外交ルートで抗議した」と言っただけだ。
 この事件には岸田首相はコミットせず緊急閣議さえ開かれていない。
 
 これまでの領海侵犯とは違い、中国が領土を主張している場所ではない。場所は長崎沖合いなのだ。
 中国は明白に日本の領空に意図的に侵入した。事実としてこれがどれほどの脅威であるかは論を俟たない。
 
 
 しかし日本の対応は上の発表のように自衛隊機によるスクランブルがあっただけであった。
 自民党政府は中国政府にろくな抗議をしなかった。
 在日中国大使を呼びつけて抗議するということもなかった。
 
 
 折りしもこの直後、二階俊博を団長とする日中友好議員連の面々が中国を訪問した。
 この事態を受けて中国への訪問が取りやめになる、そんなことにはならなかったのだ。
 
 彼らは日中友好を標榜した。中国による我が国の領空侵犯という緊迫した事態のさなかに。
 
 なんという売国的な連中なのか、そう激怒した人々も多いだろう。
 利権にまみれ、日本国民からの負託を忘れ、我が国を売り渡そうとする者がいるのだ、と。
 
 無理もない。その怒りは理解できる。醜悪極まる連中の姿を見れば、どれだけ日本を踏みにじっているのかと誰もが思うことだろう。
 

 
 一方、これとは反対に台湾政府はすみやかな反応を見せた。
 台湾政府は即座に声明を発表した。
 
 「中国による第三国への領空侵犯は東アジアの安全と安定を脅かすものであり断じて容認できない。抗議する。」
 と。
 
 このことは台湾政府が我が国政府の代わりに中国へ抗議したようなものだ。
 
 我が国の弱腰ぶりを見て改めて恥ずかしく思った人も多いだろう。
 日本の政治家は利権のあまり中国政府の顔色ばかり見ているのではないか、と。
 
 そして、「情けない」、と。
 領空の侵犯は我が国で起きたことである、なぜ外国も同然である台湾政府にこんな抗議をしてもらわねばならないのか、と。
 
 

素朴な疑問

 中国軍機による領空侵犯事件のあらましは以上のようなものだ。
 
 政府は釈然とした説明をしなかった。
 林剣報道官は中国側とどのような話があったのか明言すら避けた。
 
 多くの日本の安全保障を憂う人々によって批判が起きた。
 
 日本政府は弱腰であり国土の防衛に芯が通った対応をしていない。
 議員らは利権まみれで国さえ売ることも憚らない国賊ではないか。
 これに対して日本に友好的な台湾政府は日本政府の代わりに抗議すらしているのだ。実に恥ずかしい限りではないか、と。
 
 
 と、まあ、大体の論点はそんなところになるだろうか。
 
 こうして、やがては中国軍機が領空侵犯した動機やその意図について推測する論調が出回ることになるのだろう。
 危機感のない政府と国民の当事者意識のスレ違い。それはいつもの茶番に思えてしまう。
 
 
 しかし今回のことでは疑問がいくつかあるのではないか。
 持って当然の疑義である。
 これらについて「成り行きだった」などとして単純な説明で終えてしまうのはあまりに乱暴で軽薄である。
 
 ウクライナで起きたことを踏まえればもっと考えることがあるのではないか、私はそう思うのだ。
 
 「敵」はひとつではない。常に現実は複雑怪奇である。
 耳障りのよい答えに飛びつけば騙されるだけなのだ。
 



 
 ここにその疑問を並べてみる。それは大きく三つ。
 
 1.台湾政府はなぜ我が国への領海侵犯に声明を出したのか。
 2.二階俊博ら日中友好議連はなぜ中国訪問を取りやめなかったのか。
 3.なぜ我が国は中国政府にはっきりと抗議しなかったのか。
 
 どれも素朴な疑問に過ぎない。
 しかしその答えは単純ではないかも知れないのだ。
 
 
 まず、台湾政府はそれほど我が国に寄り添っているのかという疑問がある。
 最近、半導体工場を九州に作ったとは言っても、あくまで台湾政府は独自の自治権を持った外国政府に相当する。
 台湾が我が国に友好的とは言っても日本とは安全保障協定もないし、時には我が国と領海侵犯で衝突することもある。
 台湾が日本に義理立てする理由はないのだ。
 
 また、この領空侵犯事案の発生時に台湾政府と我が国に接触はなかった。
 台湾政府は我が国に関係なく中国政府を非難したのである。
 
 
 次に、二階俊博という人物。彼は息子に選挙区を譲って引退を宣言したような人物である。彼は政治の世襲を企んでいる。
 ならば自身の売国的な行動は息子にとっては致命的ではないのか。
 
 また、参加した他の議員らの面々にしてもそうそうたるものだ。こんな態度が国民の批判を受けないで済むと彼らは本気で思ったのだろうか。
 
 ここに参加した議員を列記する。
 保守派から見れば、これは「国賊議員の一覧」と言われることだろう。
 
 二階俊博、福島みずほ、岡田克也、海江田万里、北側一雄、志位和夫、古川元久、甘利明、近藤昭一、小渕優子、山口那珂津男、加藤鮎子。
 
 
 この中国訪問を止めなかった議員らを媚中派と呼び、ただ「売国的議員」とするだけでいいのだろうか。そう断じていいのだろうか。それが素朴な疑問である。それほど単純なことなのか、と。
 
 ならばその大罪は償われねばならない。
 そもそも今に始まったことではない。なぜ有権者はこんな連中を放置してきたのか。
 
 
 最後の疑問は、どうして相変わらず日本政府は曖昧な対応に終始したのかという疑問だ。
 コトは意図的な軍用機による領空侵犯であり、この事態は我が国の想定よりずっと深刻だったはずなのである。
 
 ところが、まるで事件を黙殺するかのように日本政府の対応は静かなものだった。
 これをただ政府の怠慢や事なかれ主義とするだけでは納得しがたい。
 周知のように、このところ米国政府より「東アジアにおける安全保障リスク」ということが言われて久しいのだ。
 今回のようなことを「事なかれ的な対応」とするだけではまるで辻褄が合わないことなのである。
 


 
 以上の素朴な疑問には容易に答えが見つからない。
 単純な答えで満足するのはあまりに杜撰だ。
 
 そうすると不都合な真相も憶測しなければならない。
 
 
 これを「不都合」とするのは二重の意味がある。
 まず多くの愛国的な人々にとってはそれは受け入れ難いものだろうからだ。真相を受け止めることは簡単ではない。
 
 売国奴的行動に見えることにも理があるのかも知れない、それを考えさせられることになる。
 そうなれば上げた拳をどこへ向ければいいのか、鬱憤は解消されない。しかしなんでも単純に勧善懲悪とはできないものだ。
 
 
 またもうひとつの「不都合」の意味とは、以下に述べることが仮に真相だったとしても、国民に知らされないことは許されないからだ。
 国民主権の原則があるからだ。
 
 仮に我が国の行動や判断が正しかったとしてもだ。
 それは断じて許されないことだ。そこに不都合がある。
 我が国の主権者である国民をないがしろにしたことになるからだ。
 許されるべきではない。
 たとえそれが我が国の国益に適ったことだったとしても。
 
 
 しかしともかく、本件の真相の仮説へと迫ってみよう。
 
 

ウクライナから中東へ

 
 言うまでもなく、まず考えねばならないことはウクライナ紛争のことである。
 我が国の安全保障が改めて考えられるようになったキッカケである。
 
 
 ウクライナ紛争は米国によって引き起こされた。
 それは2014年から始まっていたと言っていい。
 クーデターによってウクライナに米国寄りの傀儡政権が樹立され、ウクライナは反ロシアを鮮明にしたのだった。
 
 それに伴い衝突が起きる。ロシアを支持する地域への攻撃が始まる。ロシアはこの地域を支援して紛争となった。
 この紛争を収めるために締結されたミンスク停戦合意はウクライナのキエフ政府によって一方的に破られる。
 ウクライナ政府は東ウクライナ住民への攻撃を再開した。そして親ロシア系の住民を殺害し始めたのだ。
 ドイツなどが仲介した停戦合意はウクライナ側によって一方的に破棄されたのである。
 
 
 そうして2022年、プーチンはこれ以上のロシア系住民の殺戮を止めさせるためとうとうウクライナに侵攻する。
 これが現在まで三年、続いているウクライナ紛争である。
 
 西側の宣伝とは裏腹にロシアにはウクライナ占領の意図が窺えず、キエフに侵攻する素振りすら見せていない。
 ロシアはウクライナの武装解除を目的として戦っているのである。
 
 
 ロシアが侵攻する直前、米政府バイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻をまるで誘うかのように何度も世界に向けて予想を示したものだった。
 いわく、「近いうちにロシアはウクライナに侵攻するだろう。我々米国にはその確信がある。」と。
 
 これはプーチンがウクライナ侵攻をしなければ米国とその傀儡が住民の大量虐殺を行うことを意味していた。いわばそれは脅迫であった。
 もしこれを放置すれば住民は虐殺されプーチンの指導力には疑問が投げかけられたことだろう。プーチンは失脚したはずだ。
 
 その上、ウクライナはロシアにとって安全保障上の脅威となっていた。
 それはかつてアメリカがキューバ危機に直面したのと同じことだ。
 NATOは勢力を一方的に拡大させてきた。当然、ロシア側には同じ道理が立つ。
 いずれにせよ、プーチンには他の判断の余地はなかったのだ。
 
 

 我々は西側、とりわけ米国政府によって引き起こされてきた世界各地の、世界中の混乱と紛争であるという事実をまず認識すべきである。
 それは武力を伴わずとも少なくとも謀略であり、様々な傀儡勢力、市民団体などを通じて起こされた騒乱から始まっている。
 
 米国こそが謀略という、「チカラによる現状変更」を繰り返してきた当の侵略国家なのである。
 この認識がなくては我々は誤る。国民の生命と財産を守ることはできない。
 
 
 ともかく、ウクライナ紛争を起こしたのはロシアを弱体化させプーチンを追い落とそうとするのが動機であった。
 しかしロシアを追い込もうと画策した米政権の目論みは見事に頓挫する。
 ロシアは強力で志も高く、西側から際限なく武器が供給がされてもウクライナは無力だった。
 武器遊びに耽るだけのゴロツキたちがウクライナの兵士である。ナチスを崇拝し戦争ごっこをしたいだけの連中がロシアの精鋭に勝てるはずもなかったのだ。
 
 
 やがてウクライナ紛争が明らかに行き詰まったと見えた頃、米政権は唐突に東アジアのことを言い立て始める。
 それは我が国にとっては青天の霹靂とも言えるような話であった。
 
 「ウクライナ侵攻に勝利したロシアは次には必ず東アジアを狙う」、という話だ。
 
 意味不明ではあったが多くの人々には連想させるものがあった。
 そうやって米政府の「予想」したことは現実のものになってきたからだ。
 また米国は何かをやるつもりなのかも知れない、薄々そう感じた人もいたことだろう。
 
 
 ところが次の発火点は中東となった。
 次の順番はこちらとばかりに、まるでそんな風にしてイスラエルがガザを侵攻した。
 ハマスが米国から何らかの形で焚きつけられ罠に嵌ったのだ。
 ハマスはイスラエルを先制攻撃した。
 この報復という形で、まるでお墨付きを得たかのようにしてイスラエルは嬉々としてガザを攻撃し進撃する。
 
 こうして今、すでに世界はウクライナなどどこ吹く風、次は中東ということになったのだ。
 
 
 米政府がイランを巻き込みたいのは明らかだ。
 ロシアと同じく米国にとって邪魔なのはイランである。イランは米国の傀儡にはならない。イランには石油という天然資源もある。
 だから米国はイスラエルの侵攻と残虐な民間人の虐殺を容認し、中東で火の手が広がることになったのである。
 
 
 ここまでの推移はあまりにあからさまなものだった。
 ウクライナが行き詰まるとみるや突然に中東が紛争の舞台になったのだ。
 誰が糸を引いているかは明らかだ。
 
 いよいよその次は米政府の言う通り東アジアか、当然にそうしたことを予想させた。
 多くの人々がそうした想定をせざるを得なくなった。
 


中東から東アジアへ

 それにしても「ウクライナ侵攻に勝利すればロシアは次に東アジアを狙う」、という話。
 
 これはまるで理屈の立たない無茶な話である。
 
 荒唐無稽で誰が考えても説明はつかない。
 だいたいなぜ「ウクライナの次」が東アジアなのか。どんな「順番」に基づくと言うのだろうか。
 
 
 この説はウクライナ侵攻がロシアの領土的野心に基づくものであることが前提となっている。「ロシアはアジアへ進軍する」というわけだ。
 しかし、そもそもロシアにはウクライナへの領土的野心はない。そのような野心を裏付けるような行動はひとつもないのだ。
 
 ロシアのウクライナ侵攻の目的はロシアの安全保障であり、ウクライナの武装解除である。
 つまりウクライナ侵攻の勝利は、ウクライナを「狙う」とか、どうするかというような話ではないのだ。
 
 すると東アジアはロシアにとって安全保障上の脅威かという議論になる。これまでの地政学的バランスはそれを否定する。少なくとも米国が挑発に及ばなければ。
 
 つまりウクライナから「東アジア」へとは結びつきようもない話なのである。
 
 
 また、なぜ「ロシア」が次に東アジアを狙うと予想するのか、その理屈がない。
 狙ってくるとしたらまず中国である。
 中国とロシアの地理的な関係からすればロシアが東アジアを手中に入れることは中国にとっては脅威となる。
 しかも両国は友好関係を維持している。
 「ウクライナに勝利したロシアが東アジアを狙う」という理屈がそもそも成り立たないのだ。
 
 仮にロシアと中国が結託して東アジアを狙う、そうするとしよう。
 それならなぜ「ウクライナの次」という順番になるのだろうか。その論理的連結はまるで不可能なのである。
 
 
 結局、どこがどうウクライナ情勢と東アジアが結びつくのか、論旨は支離滅裂でまるで不明な話だ。
 米政権はあたかもウクライナの劣勢を証拠として東アジアの危機が迫っているとしているようだが論理がない。
 東アジアの不安定化となればまず中国が関与するだろうが、それとウクライナ情勢とはまるで関係がない話なのである。なぜ、「ウクライナの次」なのか。
 
 中国と東アジア周辺各国は緊張関係にある。これは間違いない。
 しかしそのために米軍沖縄基地があるのだ。
 
 それでは場所はどこなのか。どこが発火点になるなのか。どこを米国は想定しているのだろうか。
 「東アジア」と言ってもどこなのかはハッキリしていない。
 
 その相手は中国に他ならない。米政権が「中国から正体不明の気球が漂着した」などと騒ぎ始めたのもこんな時期のことであった。
 米政権は戦闘機でこの気球を撃墜するというパフォーマンスも行っている。
 この時機、米政府は中国との緊張をなぜか煽ってすらいたのである。まるで中国をせっつくようにして。
 
 ただ、当初は米国政府は漠然と「東アジアの危機」としていただけであった。
 ならばそれは台湾だろうか、尖閣か、それとも沖縄か。
 あるいはフィリピンだろうか。
 
 現在、それは台湾ということに落ち着いている。
 

 
 岸田首相はこの過剰な警告とも思える米政府の説を信じた。
 アメリカのシナリオに従ったのである。
 対応して岸田首相は防衛費の増強を打ち出した。
 武器を米国から買うことに同意し、中古のミサイルを購入することにも同意したのである。
 
 アメリカはこの間、ずっと中国の東アジアにおける脅威ということを言い立ててきた。
 武器を買え、でないとどうなるかは分からんぞ、そんな恫喝としか言えない。
 
 こんなことは子供でも分かることだ。
 アメリカは今度は東アジアにチョッカイを出そうとしているのだ。アメリカは自分の利益のために、日本に武器を売りつけるために危機を煽っているのではないか。
 そのシナリオに中国が乗るというだけに過ぎないのではないか。
 
 
 台湾も米国から兵器を購入した。
 台湾政府は中国本土政府からの干渉に対して自治権を守るために自衛する必要がある、それが台湾の軍備の趣旨である。
 しかし台湾は中国と敵対はしていない。台湾が中国の一部であるという原則はアメリカにも共有されている原則である。
 すなわち、中国が台湾を武力によって侵略することは考えられない。
 
 つまりこの説明のつかない「ウクライナの次は東アジア」という予測は何の信憑性もないことなのだ。
 
 
 だが最大の裏づけがある。
 それは「米政府が中国の脅威を言い立て始めた」ということに尽きる。
 
 誰もが考えられることなのだ。すなわち、米国の戦争屋はウクライナの次は中東、そして中東の次は東アジアへと戦禍をつなげようとしているのかも知れない、と。
 すでにウクライナの「次に」中東で火の手が上がっているのだ。
 
 
 つまり米政府が「予想」したことは予告なのである。全てがアメリカ自らが引き起こしてきた紛争なのだ。
 
 イラクには大量破壊兵器は存在しなかった。
 そんな言いがかりをつけてアメリカはイラク侵攻をした。しかもイラク侵攻には安全保障上の根拠など何もなかった。これによりアメリカはイラクの石油権益を得た。
 
 
 もちろん東アジアにおいて我が国から紛争を起こすことは考えられない。我が国の利益にはならないからだ。
 我が国は中国による領海侵犯など常に挑発を受ける立場にある。
 すると中国次第ということになるが、そこに米国が「ウクライナの次」との予想をしてきたのである。
 それはすなわち、米国が中国を挑発して攻撃を仕掛けさせる偽旗作戦を起こすか、あるいは台湾に中国を挑発をさせるかというシナリオつながるのである。
 
 中国からここで自発的に動くことには理由がない。キッカケは常に米国が作るのだ。
 
 台湾政府は中国から独立した自治権を有しているが台湾自体は国家ではない。アメリカ政府も台湾は中国の一部であることを認めてきた。
 台湾が武装しているのは台湾での体制、その自主権を守るためだ。
 そのために台湾はたいして必要もない武器を購入させられてきた。
 台湾政府のスタンスはその時々の政権で決まる。
 
 だから中国は政治的な緊密化を図ったり貿易関係を強化するなどの策をとってきた。
 つまり中国による台湾への武力侵攻は本来が考えられない。
 
 東アジアでの中国との武力衝突はあくまでアメリカ次第で起きることになる。
 
 
 
 最も想定される事態は米国が東アジアで紛争を惹起し日本を戦争に巻き込むとことである。
 そうなれば米国は武器を日本に供給し武器を買わせることができる。
 我が国はアメリカの傀儡となってウクライナのように中国と戦うことになるだろう。
 
 中国がこのシナリオを拒否する理由もない。中国は喜んでアメリカのシナリオに乗るだろう。
 政治経済や世論誘導ではなく、別な方法で中国は台湾の自主権に干渉する権利を得られるかも知れないからだ。
 
 
 だから日中衝突をアメリカが誘導すれば中国は拒否しない。中国は機会を窺うだけだ。
 
 チャンスがあれば中国はどこかしら占領もするかも知れない。
 例えば尖閣。尖閣を狙うのは領海にガス田があるからだ。領有権の主張もこれが動機である。
 アメリカが世界中の天然資源を狙ってチカラによる現状変更をしてきたのと同様、中国にも天然資源を狙う理由がある
 
 
 仮に中国が尖閣を奪ったとすれば米国はこれを傍観するだろう。日米安保など我が国を守ってはくれない。
 そうして中国がそこにガス田を開発すればこれを米国が奪還する。
 最終的にはアメリカの名の元に尖閣を天然資源ごと管理し、その権益は米国が得ることになるだろう。もともとはそれが目的なのだ。
 
 中国は和解や賠償と引き換えに尖閣周辺のいくつかの権益を得るかも知れない。
 いずれにしても米国お得意の、チカラによる現状の変更が東アジアで起きることになるのだ。
 あるいは中国は引き換えに台湾への政治的コミット、軍事的コミットが許されるようになるかも知れない。
 どの国にも安全保障上の脅威を除去する権利があるからだ。
 
 中国にとってはそれがアメリカの謀略に乗ったことの「成果」ということになることだろう。
 もちろんそれまでには日本人の血が流れる。日本人の命が失われる。
 
 

不都合な真相

 
 今回、中国軍機の領空侵犯は米国政府による何らかの挑発、もしくは扇動があっとしたらどうだろうか。
 それはハマスが引っかかったようなことだ。
 プーチンが決断させられたようなことだ。アメリカはこうした偽旗作戦を繰り返してきた。
 
 
 これに対し、日本は沈黙してロクに態度を表さなかった。
 中国に対する抗議もロクにしなかった。相手にしなかったのだ。
 「中国を」ではない、米国の東アジア緊張のシナリオを相手にしなかったのである。
 
 政府の記者発表もたいしたものはなく、マスコミも取り沙汰することはできなかった。
 その上、日中友好議連の連中は知らん顔で中国を訪問している。
 
 
 これは米国政府の想定とは違っていたかも知れない。
 日本と中国の緊張が高まるという米国の望んだ流れがいっこうに見えてこなかったからだ。
 そうなると米政府の出番も当然ない。日米安保の立場から中国を非難するというアメリカの出番もなかった。
 
 
 だから米国政府は台湾政府を使って中国を非難する声明を出させたのかも知れない。
 誰も中国を非難しないのであれば台湾を使うというわけだ。
 
 だから台湾は自分のところが領空侵犯されたわけでもないのに、わざわざ我が国日本への領空侵犯を非難してみせた。
 台湾と中国は微妙な距離感を保っている。台湾は独立しないし中国は侵略しない。茶番に過ぎない。
 そうして日中がどれだけ非難の応酬となるか、どう緊張がエスカレートしてゆくか反応を米国政府は見たのである。
 
 しかし台湾の非難にも中国政府は何も反応しなかった。
 日本にも中国にも、緊張をエスカレートさせる意思はなかったのだ。
 
 
 日中友好議連は無視を決め込んだ。
 売国奴のボケ面を晒して日中友好などと世迷いごとを言って、と、国民は彼らを糾弾するかも知れなかった。
 しかしそれも承知の上で彼らは中国を訪れた。
 知らんフリを決め込んで中国を訪問した。そんな憶測ができる。
 
 理由は米国の戦争戦略に巻き込まれないためだったのではないか。
 

 
 彼らはまるで何事もなかったかのように中国を訪問した。
 米国にしても中国と関係を断絶しているわけではない。米政権は口先で中国を非難しているに過ぎない。
 ならば日本が中国と関係を持つのに米国の許可はいらないのだ。独立国として当然のことだ。それが国益だ。
 
 その上、かつてのニクソンのこともある。米国追従ばかりしていればハシゴを外されることもある。
 米国は信頼できない。その傀儡となればウクライナのように戦争の道具にされる。それがアメリカの利益になるからだ。
 そうされないために米国へも中国へも両睨みが我が国の防衛には必要なのだ。
 
 
 我が国が独自に中国との関係改善をして何が問題かということもある。
 東アジアの安定と平和のためなのだ、と。
 
 
 あくまで日中友好議連は超党派の議員の自発的な集まりである。
 超党派だから、党や政府の方針によって抑えられるものでもない。それが建前だ。すると米国政府の干渉が及ぶことはない。
 
 軍事的緊張の機会を窺ってきた米国は日中の双方から肩透かしを食らわせたようなものではないだろうか。
 
 
 もちろん、中国にとってもメリットはあったろう。
 日本の領空への侵犯は日本の出方を見ることが出来る。自衛隊機の防空能力、スクランブルの状態を見ることも出来たろう。
 中国は米軍沖縄基地の動きすら確認できたかも知れない。
 我が国にしても中国の攻撃能力は見ることが出来た。
 結局、お互い様なのだ。武力衝突さえ避けられればいいのだ。
 
 
 それにしても、この領空侵犯の場所が長崎沖だったということは意味深だ。
 偶然にしては出来すぎてはいないかと私は思う。
 
 長崎市は先日の原爆投下の式典にイスラエルを招待しなかった。このことは米政権の強い反発を呼んだ。米政権はイスラエルの民間人虐殺を擁護する立場だ。
 
 このため西側の全員が長崎での式典をボイコットした。もちろん米国が声をかけたのだ。西側各国はアメリカの言うなりだ。
 それが「米国主導の世界秩序」というわけだ。
 
 エマニュエル米駐日大使は傲慢さを隠すこともなく公然とナガサキを非難した。いわく「歴史の正しい側に立て。」と。
 彼は我が国に敬意など持ってはいない。奴隷的、占領軍として傲慢さを隠さない。
 
 米国も他の国を蹂躙して悪びれもしない侵略国家なのだ。
 しかもゲンバクを投下した当事者だ。それが自分の思い通りにならないからと、自分たちは歴史の正しい側であるなどと公然と表明したのだ。
 民間人を無差別に攻撃し殺戮することは戦争犯罪である。
 
 そうして、、、「ナガサキの顔を潰すことを誰かが望んだ」、としたら。
 
 
 中国は米政府のシナリオにある程度は乗ってやったのではないか。
 バイデン親子や米国民主党と中国の緊密な関係はつとに知られていることだ。アメリカは中国を手の内と考え、中国はそれに乗ったフリをしながら反発したりし、自国の利益を虎視眈々と狙っている。
 米中両者の関係はそうしたものだ。少なくともロシアとは違う。
 
 中国は油断もスキもない連中だが、東アジアの喫緊の不安定化は米政権の望みだ。
 
 今回の領空侵犯を受けての台湾の声明にしても、米政府の要請に協力してやっただけかも知れないのだ。
 そこでもし我が国が米国のシナリオに振り回されれば大きなリスクとなる。
 
 
 しかし日本政府も日中友好議連もこれを相手にしなかった。
 衝突のエスカレートに少しでもつながることを避けたと言える。
 それは米国のやり方、その戦争屋のやり方がわかっているからではないか。
 そう考えれば我が国の奇妙な対応も理解できるのだ。
 
 
 つまり、中国軍機の領空侵犯は米政府による東アジア不安定化の謀略のひとつだったかも知れないということだ。
 
 それが分かっていたから日本政府も、日中友好議連も、今回の領空侵犯を表立って取り沙汰しなかった、としたら。
 しかも今回のような日本の態度はアメリカを怒らせることはない。非難のしようがないのだ。
 
 
 バングラディッシュはアメリカによる軍事施設の建設を拒否した。
 米政権はバングラディッシュにロシア挑発の足がかりを作ることを狙ったフシがある。
 ところがアメリカの戦争戦略に巻き込まれたくないバングラ政府はこれを拒否した。
 
 するととたんにバングラディッシュでデモが起きて国中が騒乱状態になった。
 こんなことが偶然であるはずもない。
 事実、このデモではアメリカが資金供与した市民団体の関与が明らかになっている。
 
 アメリカは今も世界中で他国に干渉し続けている。
 これを意識して行動することが必要なのだ。
 
 
 以上、こんな仮説、憶測は成り立つ。
 
 ただの成り行き任せやいつもの政府の怠慢や弱腰、偶発的なことが重なったとするよりもずっと理屈が立つ仮説である。
 
 
 保守派には売国奴的に見える日中友好議連だろうが、実際は米国の謀略に載せられないよう立ち回っていた、そんな憶測はできる。
 
 我が国の国益を損なっているように見えても、実際に紛争をしかけるのがアメリカだとみな分かっているとしたら。
 
 
 
 
 ・・・しかし、ここまで述べてきた憶測が仮にコトの真相だとしても私はこれをよしとは思わない。
 国民に米国の脅威とリスクについて説明をせず、一部の者たちだけで「巧くやっておいたよ」などとすることは許されないからだ。
 
 たとえ結果がどんなに良かったとしてもだ。
 
 
 それなら、もし悪い結果となったら誰が責任を取るのか。
 国民に知らされないところでやったことに責任など取るはずもない。
 
 
 痛し痒しだ。悩ましい話ではある。
 一方で河野太郎のように一族で中国利権をむさぼり国益を損なうことを平然と行う売国奴もいる。
 中国政府に首根っこを押さえられ国を売っている連中もいる。
 誰がどうということは言えないのだ。物事はそれほど簡単な話ばかりではない。
 
 誰が敵かではない。何事も簡単な話ではないということ、それを知ることが大事だ。
 
 
 しかしこの憶測が仮に真相だとしても手放しで歓迎するわけにはゆかない。
 国民主権がないがしろにされているからである。それが最大の問題である。
 
 
 以上、これが我が国にとっての不都合な真相、中国軍機による領空侵犯にかかる我が国の対応、それについての憶測である。
 
 
 以上。
 

 【 文責 padroll 】


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