アリ話、アジアで凶悪な蟻と出会った

 だいたい、黒蟻というか、アリというものが益虫だとはついぞ知らなかったことだ。とんと聞いたことがなかった。シロアリに対しての関係に限ってのことか。そして、家の中と外とではまた違うとか。
 例えば土をひっくり返してくれるからミミズが益虫とは言われる。ダニとか食べてくれるからクモも益虫だと。
 これは家の外と内側で混同してないか。
 家の床下の土がひっくり返されてフカフカになっても困るだろう。ひょんなことから竹が育ってしまい畳を突き破ってニョキニョキ伸びてきたりするとか。


 クモだって家の中なら益虫でも、巣を張って庭の作業やら畑での何やら邪魔にもなったりするだろう。
 アリも腐葉土を分解したりもする。作物にはよいだろう。きっと土にはよいに違いがない。
 


 果樹にアリがタカって、みるみるうちに弱ってゆくのは見たことがある。
 だからアリはあまりよろしくないと思っていた。アリにはあまりいい印象がない。
 何事にも両面があるとは思うのだが。
 
 あのイソップの話もまた嫌な話だ。
 アリを「働きモノ」だとか礼賛するが、人生は楽しまないといけない。貯め込んでばかりいて、墓場まで金は持っていけないのに。
 キリギリスが享楽に流された堕落者のように言われていたが、群れずに孤独を楽しむことなどアリにはできもしない。毎日のルーティーンに流されるばかりの、それこそ思考を捨てた奴隷の愚かさに過ぎないとも言える。


 
 なんだか、アリの話はいろいろと深い気がしてきた。
 


 なんでもアリ(笑)
 
 
 
 
 昔、南方のリゾート地で経験したこと
 赤茶けた小さなアリが粗末なバーの柱を上へ下へと忙しく行き来していた。大きさはそれほどではない。ビーチサイドに建てられたバーのあずまやなのだが、客のいない昼間のバーでそのアリをじっと見ていた。
 そのアリはいかにも凶悪そうな面構えだったので、ちょっと行進を邪魔してやろうと指で触ってみると、ものすごい勢いでこちらの指を噛んでくる。少し痛いぐらいだ。
 その勢いがちょっと怖いぐらいだったので爪楊枝で触れてみると、これにもものすごい勢いで攻撃を仕掛けてくる。その剣幕は小さくてもよくわかった。鬼の形相のアリ、あんなのは始めて見た(笑)。
 
 こんなアリの群落のそばでうっかり眠ったりしてしまえば、人間でさえ翌朝にはすっかり食われているだろうというぐらいの勢いさえ感じた。
 一人でそんなのをビール片手に観察していたら、オーナーの欧米人が話しかけてきた。
  「わかるだろ。そいつの攻撃性は見たことがないぐらいだ。すげえよな。怖いぐらいだよ。」と。
 彼の名はリチャードと言った。何世かは聞かなかった(笑)。
 もともと、そんな落ち着いた会話をするようなバーではなかったからお互いにいたく意気投合したものだった。
 
 
 「ホテルカリフォルニア」あの曲が頭を流れた。
 

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