シュレジンガーの猫

 「私は欝なのでしょうか。生きてるか死んでるかわからない気分です。」

 

 知恵袋でこんな質問をしていのがいた。からかったわけでもないんだが何が気に入らなかったのか、回答はしっかり削除されてしまった。
 考えてみればそういう知恵袋の手前勝手な部分が少し気に食わないのでこっちに引っ越してきたという事情がある。(笑)
 自分の気に食わないものは消してしまう。なんというご時勢か。
 それでも延々と回答した履歴を掘って見てくれる人がいるらしくて、古い回答にナイスなんて評価をしてくれる人もいる。だから、まあ俺の言い方もそんなに悪くはないんだろうけれど。

 

・・・
 別に問題はないからその質問と回答を晒してみる。


いわく、

 「毎日が面白くない。自分は毎日が生きてるか死んでるかわからない心持ちである。これは鬱病なのかと心底悩んでいる。
 生きているか死んでるか、まるで実感が湧かない、喜びもないし苦しみもない。ただただ退屈というか、そういう状態が苦痛でしかない。この生は無駄に思えてくる。人にも奇妙に思われる。それがまた苦痛になる。
 やはり自分は鬱病なのだろうか。」
というものだった。
 


 
 
俺は以下のように答えた。
 
・・・
 
 鬱病という病は「躁鬱」といい、躁状態が発現しないと鬱病とは公式には認められません。
 「躁状態」とは、なぜか楽しいだけ、ハシャぎたくなるばかりでただただ周囲にウザがられるような精神の状態のことを言います。私も時々なるのですが、他人にはそのノリがわからないだけによくウザがら
れます。

 鬱病の発症として認められるものは、これが交互に起きるのが通例です。
 躁と鬱の波、それを繰り返し上下の山と谷を作り、やがて振幅を大きくしてゆき、大底や大天井で突然に死に至ったりする。
 つまり、あなたは鬱病とはいえないということです。
 
 さて、しかしあなたのお悩みのあなたのことですが、「死んでるか生きてるかどっちでもない感覚」という感情というのは「シュレジンガーの猫」という症状に当たります。
 あなたは今、「理論的に」死んでいるとも生きているとも言え、誰かがあなたの心の扉を開けない限りはあなたの生はずっと決定されていない状態のままなのです。
 この言葉、「シュレジンガーの猫」でググルと出てきます。
 


 今のあなたが「人から変に思われるようになっている」というのは当然のことです。あなたは生きているか死んでいるか、そのどちらの状態でもないのですから。
 しかしあなたがそれを決めることはできません。もはやそういう状態になってしまうと、あなたは誰かに決めてもらうしかなくなります。
 誰か、それがカレでも上司でも肉親でも、つまり誰でもいいのですが、誰かが突然にあなたの心の箱、その扉を開いてしまうまではあなたはそのままというだけなのです。あなたは猫ではないのでそのどっちつかずの状態が分かっています。それで不安になってしまうのでしょう。

 

 そこであなたは、まず自分で問いかけてみるといいでしょう。
 あなたは、自分の心の扉を誰かに開かれてしまい、死んでるか生きているかを人に決められてもいいと思いますか。人にあなたのことを勝手に決められてもいいと思いますか?


 

 もし、それはごめんだ、他人に自分をどうこうされたくないとあなたが考えるのなら、くれぐれもむやみな人に箱を開けられないように注意しましょう。用心するようにして、欝なんて心配しているヒマはありません。

 逆にもし、それでも構わないというならもくにとんだいはありません。待っていれば必ず誰かが箱をあけてくれるでしょうからワクワクしながら今暫くお待ちください。やはり欝なんてヒマはない。
 おだいじに
 
 
 
・・・
 この回答をしてあげて、どうやら質問者は量子物理学についてはぐぐって理解しと言っていたが、質問は削除され本人はすっかり消えてしまった。
 「死んでるか生きてるかどっちでもない」ときたからシュレジンガーの話をした。
 そこは単なる連想でしかないのだが、そこから広げればまた別な気付かない真実が見えてくる。
 欝だのサイコパスだのPTSDだの、世の中は情報に振り回されている。それが「レッテル」とか「キーワード」に過ぎないものなのなら、別なレッテルやキーワードをぶつけて見ればいい。
 そうして見つかる何かを期待すること。それが「箴言」ってものじゃなかろうか。
 
「人生はメリーゴーランド」と誰かが言う。
 それなら遊園地ネタだ。俺はジェットコースターの人生を選択すると言う。年齢と身長制限がないメリーゴーランドはその代わりにシートベルトがない。ジェットコースターは実は回転木馬なんかよりもずっと安全かも知れない。と。
 なーんて感じに。
 
 その知恵袋の質問者。
 答えた俺にバトンというか、箱を開ける決定権を渡すことを恐れて消えたのだろうか。
 ならその行動は正しい。

 

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